すべてのはじまりは、あるお客さまからの1本のお電話でした。
お引渡しをした新居に引っ越した途端、お嬢さんにぜんそくの症状が出始めたというのです。
今でこそ”シックハウス症候群”という言葉は広く認知されていますが、当時はまだ一般的ではありませんでした。
何が原因なのか思い当たらなかったのですが、ご自身でもいろいろ調べていたお母さまが、「裏側に炭の粉を塗った壁クロスに張り替えたら咳が治まったケースがあると聞きました。わが家もこのクロスに張り替えてはどうでしょうか。」とご相談に来られたのです。
そこで、ご希望に応えて家じゅうのクロスを張り替えたところ、お嬢さんの症状がピタリと治まったのです。
お客さまも喜ばれ、当社としても胸をなで下ろしたのですが、この出来事は家づくりに対する当社の発想を大きく変えるきっかけとなりました。
お客さまからのクレーム。
このような健康トラブルは、家の建て方ではなくクロスに使用されている接着剤や化学物質に問題があるのではないか。さらにお客さまの事例を考えると、炭そのものが健康に何らかの良い影響を与えているのではないか――
そんなことを考えていたある日、テレビで中国湖南省の馬王堆古墳という2100年前の墓の話題が取り上げられていました。
5tの炭に囲まれた棺の中から、死後まもないと思えるほど生々しい遺体が出てきたという。驚きましたね。炭というのはそんなすごい力があるのか、と。
当社が本格的に炭を使った住宅の研究に取り組み始めたのは、それからです。
シックハウス症候群のおもな原因は、空気中の化学物質やダニ・カビ、さまざまなばい菌などがあります。これらをきちんとコントロールすることが健康住宅の大切な条件です。
多孔質の炭には、これらの有害物質を吸着する働きはもちろん、湿度を調節する働きもありますから、ダニ・カビの原因となる湿気を防ぐ上でも有効です。日本でも古来からこの働きを建築に利用した「敷き炭」「置き炭」という方法があります。
しかし高断熱・高気密な現代住宅の場合、室内の空気が動きにくいため、ただ炭を置いておくだけではその周辺の空気しか浄化できない。だから換気経路が重要になるのです。家じゅうの空気がつねに炭に接した状態をつくるために、当社は北海道立北方建築総合研究所との共同研究を開始しました。
その結果、第2種換気により吸気ファンから室内に新鮮な外気を取り込み、炭の層を通して室内に循環させ、室内の空気を排気口から自然排出する24時間換気システム「炭1トン仕様 カーボンエアクリーンシステム」の共同開発に成功。おかげさまで特許を取得しました。